弾かずとも分かる旋律は、やはり一度も聴いたことがないものだった。
 頭の中で響かせる音の重なりは、不協和音で、しかしどこか心地良くて。
 普通なら考えないような——僕の大好きだったドビュッシーの曲なんかによく見られる、気持ち悪くない類の不協和音だ。
 祖父の才能こそ、今となっては確かめようがないのだが、一体、どれだけの時間をかければ、これだけの作品を作り出すことが出来るのだろうか。
 現代クラシックでありながら、クラシック全盛期である過去に流れていても、何ら違和感は無さそうなものである。

 どうやって、これを創ったのか。
 何をモチーフにしたのか。
 そして——どうして、これを創ったのか。



 その二つが、どうしても知りたくなった。