「バカっ…
そこまでして、どうして私なのよっ」

「そんなの、愛してるからに決まってるし…
俺は聡子を信じてるからだよ」

「っっ、鷹巨…」

そんなに愛してくれるなんて…
ぶわりと涙を零しながら、ぎゅっとぎゅっと抱き返した。


「愛してるよ、聡子。
すごく、すごく…
無事にやめれたら、結婚指輪買いに行こう?」

揚羽は泣きながら、コクンコクンと頷いた。


結局、詐欺ではないと判断したものの…
毒女との繋がりが皆無とは限らないため。
今はまだ、組織の事を嘘だと明かすわけにはいかなかった。

そうなると建前上、手切れ金が必要になるが…
後の会話で、自分で払うと説得したにもかかわらず。
「俺が(詐欺師をやめてと)頼んだんだから、ケジメをつけさせてほしい」と押し切られてしまい。

仕方なく揚羽は、いつかカミングアウト出来る日までそのお金を預かる事にした。




そうして後日。

倫太郎に電話して、事の経緯(いきさつ)を報告すると。


『っ、よかったなっ。
…幸せに、なれよ』
どこか泣きそうな声で言われ…

自分の事のように喜んでくれているんだと。
切なさや色んな感情が込み上げて…
揚羽まで泣きそうになる。