彼───宇佐美 依里(うさみ より)くんは、一つ下の部活の後輩だった。




軽音楽部の私と彼。

後輩とはいえ、宇佐美くんとは所属するバンドグループが違うので、時々挨拶を交わす程度の間柄だった。




可愛らしい顔。
軽く遊ばれた栗色の髪。
色白で、細くて、高身長。

おまけに、すれ違う時に香る甘い匂い。




宇佐美くんはバンドの中でギターを担当していて、姿がまた様になっていてかっこいいのだ。
去年の文化祭で彼のバンドの演奏を聞いた時、思わず見惚れてしまった。




顔面は最強で、ギターもできる。
そしていい匂い。


さぞかしモテるんだろうなぁ…と、あれに会うたびに他人事のように考える日々。





「宇佐美くんは彼女を作らない」なんて噂を耳にしたことは何度かある。

同時に「宇佐美くんは実は遊び人」なんて言う話も聞いたことはあるけれど、噂が本当かどうかを差し置いて、軽音楽部の女子たちは学年を問わず、“みんなの宇佐美くん”を徹底していた。





…まあ、本当だとしても私には関係ないけど。