湯気の立ち上るコーヒーと、皿にのった苺のショートケーキを
トレーに乗せて蒼さんが現れた。

「碧、26歳の誕生日おめでとう。」

「ありがとうございます。
 蒼さんのお陰で忘れられない誕生日になりました。」

「それは良かった。
 実はプレゼントもあるんだけど、その前にケーキを食べようか。」

「・・・あ、はい。」

蒼さんのプレゼントという言葉に、これ以上まだあるのかと驚き
ながらも、取りあえずケーキを食べることにした。

苺のショートケーキは甘すぎず、何個でも食べられそうなくらい
美味しかった。

「ケーキ、とっても美味しかったです。」

「なら良かった。」

にこやかな顔を向けてから、コーヒーをグイっと飲み干すと

「碧に誕生日プレゼントがあるんだ。
 作業部屋に置いてあるから、一緒に行こう。」

「あ、はい。」

私の返事が終わらない内に私の手を引く蒼さんに、いつもと違う
何かを感じた。

手を引かれたまま、あの白いドアの前に立つ。

梨花さんの画を見た日から、この部屋には入っていない。

心が落ち着かず、心臓がドクドク音をたてているのが分かる。



蒼さんの手がドアに掛かり、内側にドアが開いて行った。