深い深い海の底

果てない孤独と寂しさの中に私はいた


いつから私はひとり、ここにいるのだろう

忘れてしまう程、遠い昔のような気がする


仲間がいた頃は、歌を唄い、魚と共にどこまでも泳いだものだ

住む場所を追われ、一人また一人といなくなっていく仲間達


いつもの様に暗い深淵から上をただ見上げる

いつもなら青煙のような海が広がるだけの空間に、キラッと光る
物が目に入った。

“ 何!? ”

キラリと光った物は、まるでそれ自体が意志を持っているかの
ように、真直ぐ自分の元に降りて来る。

私は、ただ唖然としてその様子を眺めていた。

暫くしてそれが頭上まできたところで、ハッとして両の掌を差し
出すと、掌にヒヤリと硬い感触が伝わってきた。

両の掌で、優しく包み込むようにして目の前で掌を開くと、そこに
あったのはキラリとした石のついたシルバーのリングだった。

それと同時に、リングから自分の身体に流れ込んでくる感情の波

・・・悲しみ、怒り、愛、憧れ、劣等感、嫉妬、希望、後悔、諦め

そして・・・寂しさ・・・・。



私の瞳から、その感情に共感するように涙が零れた。



次の瞬間、激しい渦が私を襲った。

為す術もなく、私は渦に飲み込まれてしまった。


渦が去ったその場所には、大きな岩だけが残っていた。


そして暗い深淵は、何事も無かったかのようにいつもの姿をそこに
現すだけだった。