俺は碧さんに促されるまま、氷室蒼の向かいのソファーに腰を下ろす。

碧さんは、キッチンに向かったと思うとコーヒーを持って俺の前に置いた。

「江波さん、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

コーヒーを一口飲むと、ほろ苦い味が口の中に広がった。

「江波さん今日はご足労頂きありがとうございます。
 碧の戸籍の件で、弁護士さんはどんな感じですか?」

氷室蒼がそう聞いてきた。

「はい、時間は少しかかるそうですが大丈夫です。
 それと、直接弁護士の先生にお会いした方が良いと思い、先生の都合の
 良い日も確認してきました。」

そう言って琢磨先生の名刺と日時を伝えつつ、俺は浸りの様子を伺った。

特に男女の関係という雰囲気は感じられない。

俺は安堵の息を吐きつつ、コーヒーを飲んだ。

氷室蒼は、保護者の様に碧さんを見ているだけなのかもしれない。

金持ちの道楽なのか・・・

確かに氷室蒼は碧さんよりかなり年上のようだし、兄のように妹を護る
感じなのだろう。


一通りの話をして、俺は席を立つ

「碧さん、心配なことや、何かあったらいつでも遠慮なく相談してください。」

「ありがとうございます。
 江波さんがいてくれて助かりました。
 今後も何かとお世話になるかと思いますが、よろしくお願いします。」

「はい、ではまた顔を出します。」


碧さんの見送りに俺は機嫌よく氷室邸を後にしたのだった。