そして今日、やっと碧さんから連絡を貰いこうして弁護士の琢磨さんの所へ
来ていたのだった。


琢磨さんのOKの返事を貰い、俺は意気揚々と氷室邸に向かっていた。

碧さんに会えることは嬉しいが、あの氷室も一緒らしい。

俺は、あのどこか影のある冷たい印象の氷室を思い出していた。

例え自分が助けた相手だとして、見ず知らずの人間を雇い、住む場所まで
与え面倒をみているのは、単に親切心からなのか、それとも・・・・。

俺は浮かんでくるもう一つの可能性を考えたくなくて、頭を振って思考を
シャットダウンした。


俺は小高い場所に建つお洒落な北欧風の家を見上げた。

「・・・ここか。」

広い敷地に建つ一軒家、俺の給料ではとても手の届かないような家。

俺はバックミラーで身だしなみを確認すると車から降り、玄関に向かった。

インターホンを押すとパタパタと足音が聞こえ、程なくして碧さんが顔を
出した。

二週間ぶりに見た碧さんの顔に、俺はそれまでの憂鬱な感情はどこかに
飛んでしまった。

「久しぶり、元気そうだね。」

「はい、お陰様で楽しく暮らせています。
 今日は態々ありがとうございます。
 どうぞ上がってください。」

碧さんがにこやかにそう言って、スリッパを俺の前に出した。

碧さんに案内され通されたのは、広いリビングだった。

ソファーには、この家の主である氷室蒼が座り、無表情のまま俺を見ていた。