琢磨(タクマ)さん、お願いします!
 その子、(アオイ)ちゃんって言うんですけど、記憶喪失で・・・
 俺、少しでも力になってあげたいんです!」

俺は必死になって、目の前で煙草をふかし、椅子に踏ん反り返っている
弁護士の斎藤 琢磨(サイトウ タクマ)さんに頭を下げ頼み込んでいた。

琢磨さんは、「フ~」っと煙草の煙を吐き出して俺と目線を合わせた。

「あ゛~、分かったよ。
 他ならぬ圭太の頼みだし、その碧ちゃんの件引き受けよう。
 それに、そこまで必死に頼むってことは、アレだな?
 圭太、その碧ちゃんに惚れてるだろ?」

見透かすような目で俺の事をみる琢磨さんに、慌てて言葉を返す。

「な、何言ってるんですか!
 俺は、ただ人助けを・・・」

「まぁ、分かった、分かった。
 で、先方は何時でも都合つけられるのか?」

「あ、はい!それは大丈夫です。
 碧ちゃんにも確認してあります。」

「じゃあ・・・・明後日の10時に事務所に来るように伝えてくれ。」

「あ、ありがとうございます!
 俺、どうしても一番信頼できる琢磨さんにお願いしたかったから・・。
 よろしくお願いします!」

俺は90度の角度で深々と頭を下げた。

琢磨さんにお願いできることで、意気揚々と事務所を出ようとしていると

「圭太、頑張れよ!応援してるからな!ガハハハハ!」

最後の笑い声は余計だが、琢磨さんの大きな声が俺の背中にかけられた。

チクショー、俺で遊んでやがる!!

嬉しいような、恥ずかしいような気持ちで事務所を後にした。