一人残された病室でベット脇に置いてある椅子に座る。

女が寝ていたベットを見つめながら、今の状況を考えていた。


女と自分には何の関わりのない赤の他人。

だが・・・何か割り切れない何かを感じる。

それに、あの捨てたはずのリングの事もある。

モヤモヤする頭を抱えていると、女が看護士が押す車椅子に乗って
戻ってきた。

「お待たせしました。
 後で先生からお話がありますので、このままお待ちください。」

人の好さそうな看護士がそう声を掛け病室から出て行った。


女はベットの上で、少し不思議そうに俺の事を見ていた。

そうか・・・女からすれば、初めて見た人間が同じ部屋にいるのは
不思議だろうと思い当たり、女に声を掛けた。

「初めまして、俺はあなたが砂浜で倒れているところを見つけて
 この病院に運んだものです。」

俺の言葉を聞いて、女は納得したのか「・・・あ・・り・・と・。」
声にならない声を出しながら、頭を下げた。

俺も言葉を続けようとしたところで、部屋をノックする音がして
中川が顔を出した。

女の顔を見ながら

「さっき話したように、こいつも一緒に聞いてもらうからね。」

と確認するように話すと女は、コクンと頭を下げた。