お母さんたちも帰ってきて、とくに何もない平穏な毎日を送っていた。
宗ちゃんのお家に泊まってから1週間が経ったある日のこと。
朝。いつものように学校へ行こうと家を出た。
隣の家の玄関に、宗ちゃんママの姿が見えて駆け寄る。
「宗ちゃんママ、おはようございます!」
「あら藍ちゃん、おはよう」
外に出かける予定があるのか、カバンを持っている宗ちゃんママ。
「どこか行くんですか?」
そう聞くと、困ったような笑顔が返ってきた。
「宗壱が忘れ物しちゃってね。急ぎじゃないって言ってるんだけど、外出できる時間があんまりないから、今のうちに届けに行こうと思って……」
え……? 宗ちゃんが忘れ物?
いつもきっちりしている宗ちゃんが、忘れ物なんて珍しいなぁ……。
「宅配でもいいんだけど……ちょっと心許なくて……」