「じゃあ、本当は違うのかい?」


「さぁ。私にはわからない。でもきっと私、悪いことはしてないわ」


「じゃあ、やっぱり違うんだ。でもどうして、僕は君を犯人だと思ってるんだろう?何か証拠があるからじゃないのかい?」


彼女は、ちょっとだけ困ったように店の外の陽射しの加減と、それから自分の細い手首を返して、その内側の時計の針を見ていた。


「さぁ、どうなのかしら?
でも……、きっと未来になればわかるんじゃない?
じゃあ、そろそろ行かなくちゃ。また、会えるかしら?」


「また?僕とかい?」


驚いた僕に、彼女は“当たり前でしょ”という表情をひとつも隠すことなく笑った。


「ええ、そうよ。お嫌かしら?変な女だと思ってるでしょ?」


「いや、いいよ。そりゃ、未来の話をされちゃ、ちょっと変だとも思うけど……、だって誰も未来を知ることは出来ないからね」


「ええ、本当にそうね。だけど、私には解るのよ。少しだけならね。特に貴方のことは。
まぁ、いいわ。とにかく、来週坂の下の珈琲屋さんで午後二時に。いいかしら?」