【僕の長い長い一日】





 その小説はまだ終わってはいない。
 しかし、終わることはないのだろう。

 何故なら、著者がそれを拒んだからだ。ずっと、そのままでいることを望み、そのとおりにしたからだ。

 ただひたすらに思いを詰め、描き込んだその小説はもう二度と人の目に触れることはないのだろう。



 いったい、誰の為に……その小説は在ったのか?





 唯一面白いと感じ、そして作文と称した男だけが何かを判っているのかもしれない。いいや、無意識に気付いているのかもしれない。



 しかし何れにせよ、そのことにはもう、意味はないのだろうということも。