死んだ男の名前は

“神村 冬樹”(カミムラ フユキ)

と云った。
(真里は頑なに“腐った男”と表現していたが)死因は自殺と云うことで断定されるまで時間の問題でしかなかった。


 難航していたのは、死亡推定時期だけで部屋が密室であったことや傍らに散らばった大量の睡眠薬やその類の残骸、それらは何年も前から不眠を訴え、病院通いをしていたことから、なんら不自然なところは見当たらなかった。


 ただ、“ゆっくりと腐っていった”と云う印象だけが関係者達の共通の喩えだった。