僕は彼女が残したセッケンの香りを心地よいと感じながら、髪を洗い、歯を磨き、顔や身体を洗った。




僕が戻ると彼女は、自分の為に猫を退かせてしまった、と詫びたが僕と猫はあまり一緒に寝ないようにしているんだ、と云うと少しほっとした顔になった。





僕と彼女は煙草を一本ずつゆっくりと灰に変えて明かりを消した。レコードはまだ、気持ち良さげにジャズのスイングで回っていた。


彼女は気持ちの落ち着く素敵な曲だと褒めてくれた。







僕らはナイトテーブルの上の小さくて不確かな程に心許ない灯りに照らされて、一夜を共にした。







しばらくして、先程の小さく耳元に掛かる吐息とは対象的な安らかな寝息をたてる白い肌に僕は、彼女を愛しているのか?自分に問いかけながら、ひどく愛おしく見えた頬にキスをした。





――そして、いつしか眠りに就いた。何年かぶりのひどく心地よい眠りだった。