「あら、カッコイイこと」


ちょっとあしらったように、でも嫌味は含まずに……いや、含まれていなかったと僕は思いたいのだが……まぁ、そんな感じで彼女は笑った。そしてコーヒーを一杯注文した。



「ねぇ。これからどうします?今日はこの後お暇かしら?」


見るからに上機嫌な彼女は僕が美化した想像よりも遥かに愛らしい笑顔を見せた。


「ああ、これといって用事はないけど」


もうお気付きの方も多いとは思うが、僕の仕事は割りと自由がきく方なのだ。

なんて、僕の思考はそっちのけに彼女は続けた。


「じゃあ、お食事にでも行きません?」


「ああ、いいとも。でも、それまでかなり時間があるよね」


「そうね。何処かに遊びにでも行きましょうか?お腹を空かしにね」


まるで日曜日の父親にねだる娘みたいな笑顔だった。こんな顔をされると、彼女の年齢が想像よりもかなり若いのではないかと思う。

気にはなるものの、わざわざ女性に年齢を聞くような不躾な真似はしない。


「遊びにって、いったい何処へ行くんだい?」


「んー、まだ内緒よ」


そう云って、彼女は人差し指を立てて唇の前に当てた。