先輩、私だけに赤く染まって


私だったら嫌だ。


だけど流石は先輩で、顔には一切出さなかった。


「杉野さんのお友達かな?どうも、早瀬です」


それどころか失礼な涼子にもこの丁寧な挨拶。


本当に良い人だ…。


「八木涼子です。ごめんなさい、お邪魔でしたよね」


余計なことを言うなと必死に目で訴えているのにちっとも伝わってくれない。


そんなことを言ったら先輩が返答に困るでしょうに。


涼子のことだから敢えてこの言葉を選んでいるんだ。


先輩の気持ちを探るため、とか言って。


「いや、良いんだ。俺も友達待たせてるし。じゃあ杉野さんまたね」


そう言って、だけど先輩は一人で階段を上がって行く。