その異変にようやく気が付いたのか、ごめんと謝って素早く手を離す。
謝られるのもなんか微妙なんだけど。
「先輩私のことばっかり言えないですよ」
私が先輩のことを弄っている自覚はある。赤く染まる顔が見たいから。
だけど私だって結構先輩に赤くされている気がする。
こんな公衆の面前で顔に触れるとか。
それが狙ってやってるんじゃないんだから、厄介だ。
「うん、ごめん」
本当に分かってるのかな。
「私こそ先輩におちょくられてる」
照れているのが完全にバレているから、恥ずかしくて意地になってしまう。
「ごめんね。怒んないで」
小さい子をあやすように優しい口調で言う。
最後はこうやって年上の余裕を見せられるんだから。



