先輩が私の姿を探してた…?
首から熱が上がっていくのを感じる。
今までのように何気ない返事が言えない。
「ふ、杉野さん真っ赤だよ」
いつの間にかこちらを向いた先輩がからかうように言う。
これ絶対仕返しのつもりだ。
本人は後ろを向いた間にいつもの色を取り戻していた。
「…ズルい」
「年上はその分ズルくなるんです」
勝ち誇ったような笑みを浮かべて、私の頭を優しく撫でた。
先輩、今何を思ってるの…?
「ほら、帰ろ」
核心には何も踏み込めぬまま、先輩が一緒に帰ろうと言ってくれたことが嬉しくて。
ただこの瞬間が楽しくて。
先輩が私に会いたいって思ってくれた事実があるから、私はこんなにも有頂天でいられた。



