先輩、私だけに赤く染まって


先輩が口を開くまで、世界がスローモーションのように見えた。


自分の心臓のドキドキしか聞こえない。いつの間にか花火に盛り上がる人たちの声は聞こえなくなっていた。


全神経が目の前の先輩に集中していた。


その瞳が熱っぽく見えるのは、花火のせいなのか。それとも、私に向けられているのか。


先輩が息を吸うと、現実世界に戻ったように全ての音が戻ってきた。


「俺と、付き合って下さい」


真剣な声が耳の奥でこだまする。あれほど待ち望んでいた言葉だったのに、すぐに理解することが出来なかった。


たっぷり時間をおいて、ようやく私は口を開く。


「私と付き合ってくれるんですか…?」