先輩、私だけに赤く染まって


優しく微笑む先輩は、悲しいくらい綺麗だった。


それを見たら強張っていた全身の力が抜けてゆっくりとシャツから手を離した。


「だけど…俺が耐えられそうにない。杉野さんのことを離れた場所から見ているだけなんて、もう無理だ」


誰かが指笛を吹いた。見ると再び花火が上がっていた。


それでも、私の視線は先輩に釘付けになる。


言われた言葉が頭の中を駆け巡る。恐れ構えていた言葉とは違くて、混乱していた。


「えっと、それはつまり…」


先輩は顔をこちらに向けて、真っ直ぐに私を見る。


その瞳の中に花火が映って、妙に潤んで見えた。