先輩、私だけに赤く染まって


「俺と関係を持ったら苦しませてしまうって思いはまだ変わっていないんだ」


消えてしまいそうな声色。


まだそんなことを言っている先輩に、思わず声を荒げた。


「嫌です!私はもう先輩と離れたくない…!」


触れていた右腕のTシャツを握り締める。


至近距離で目が合った。きっと、私は何とも情けない顔をしているだろうけどそんなことに気を回せるほど冷静でいられない。


先輩がこれから言おうとしているであろう言葉をもう一度考え直して欲しかった。


しつこい女だって思われたって良い。美しく引くことは私には出来そうにない。


「最後まで話を聞いて」


先輩は自由な左手で、シャツにシワがつきそうなほど握り締められている私の手を包んだ。