先輩、私だけに赤く染まって


次に何の会話をすればいいか考えあぐねていたとき。


周りの人たちがザワザワとしだしたと思うと、夜空に赤い花火が上がった。


それを口火に次々と鮮やかな色が空を照らす。


「もう始まっちゃった、私花火観るのに良い場所知ってるんです」


次の番になっていたかき氷を受け取って、花火の方に向かって歩き出す。


だけどみんなが同じ方向に向かって歩くから、思うように進まなかった。


こうやってゆっくり歩きながら花火を見上げるのも、それはそれで良いけど。


連続で花火が打ち上がったかと思えば、ピタッと止む。


どうやら提供の放送に入ったようだ。


今のうちに出来るだけ進んでしまおうという人々の考えが、歩く流れを速くさせた。