先輩、私だけに赤く染まって


なんでこの話題を振ってしまったんだ。私のバカ。


「中学のときに一度だけ」


それでも来たことないとまで嘘はつけなくて、曖昧に濁した。嘘は付いてない。ただ余計なことは言っていないだけで。


色々考えている間に不自然な空白が生まれて、怪しまれてしまったかもしれない。


「…ああ」


対して鈍くもない先輩はいとも簡単にその真意に気付いて、心なしか冷ややかな声でそれだけ言った。


完全に浮かれてて頭が回ってなかった。


先輩の前で和樹の話は絶対にしないと決めていたのに。


喧嘩したわけでもない。もっと言えば先輩が本当に和樹とのことに苛立っているのかも分からない。


だけど私は微妙な空気をヒシヒシと感じていた。