先輩、私だけに赤く染まって


「ねえ先輩、話をしてください」


千切れかけている糸を必死に手繰り寄せる。


それでもまるで他人かのように素知らぬ顔でひたすら足を進める先輩に、心が折れそうになった。


そうまでして私から離れたいのか。


分かっちゃいたけどメールを無視されるより何倍も辛い。


「先輩はズルい」


先輩と同じ速さで歩く気力がなくなって、その差が開き始めた。


「私ばっかりこんなに好きにさせて、一方的に離れていくなんて酷いです」


もう声も届いているか分からない。だけど何メートルも先にいた先輩が立ち止まった。


そしてこちらを振り返る。


ここからでも分かる、苦しげな表情。


好きって言ってるんだから、嬉しい顔くらいしてよ。