後ろから足音が聞こえて、誰かがまた近づいて来ているのが分かった。
今度こそ先輩のような気がした。私の当てにならない第六感がヒシヒシとそれを伝えてくる。
無意識に拳を握る力が強くなって、手のひらに爪が痛いほど刺さっていた。
だけどそんなことを気にする余裕もなく、私の全神経は後ろから近づく誰かに向かう。
その人が私の横を通る瞬間、強い風が吹いて髪が私の目を覆う。その隙間から、驚いた顔をした早瀬先輩と確かに目が合った。
それなのに、私が髪を直している間に先輩は私から離れていく。
「早瀬先輩!」
私はその後を追いかけた。私の声にも答えず、その足を止めない。
小走りでやっと追いついたって先輩は私の方を見ようともしなかった。



