先輩、私だけに赤く染まって


お母さんのテンションについていけなくて、和樹も苦笑いだよ。


言うだけ言って自分は家に入ってしまうんだから、困った人だ。


「さっき何か言いかけなかった?」


お母さんの所為で止められたけど、確かに私の名前を呼んでいた。


「…いや、何でもない。またな」


だけど和樹は微妙な顔をして、何も言わずにそのまま私の家の前を通り過ぎて行った。


その様子を変に思いながらも、家に入ってお母さんと話す頃には、忘れていた。