「それよりも…」
「ん?」
「抱き締めてほしいです」
ほぼ無意識に、スルリと口から流れ出た。
バッチリと合った目は、逸らすことを許されていないように絡み合う。
先輩の眉が、困惑したように微かに寄せられた。
何も言ってくれない。嫌だけど、拒否するのも可哀想。そういうこと?
眉間のシワがどんどん深まっていく。
やっぱり無茶過ぎるお願いだっただろうか。
冗談ですって撤回しかけたとき。
一気に体を寄せた先輩は、私の肩に手を回して抱き寄せた。
思ったよりも力強いそれに、一気に心臓は激しく鳴る。
肩に乗せられた私の顔は真っ赤で間抜けになっていることだろう。



