先輩、私だけに赤く染まって


なんだろうと思いながら、私はトイレに向かう為に席に立った。


「うわ、酷い顔…」


流れ落ちた涙の跡が頬に付いていて、目は腫れている。


ずっと先輩に抱きしめられていたからこの顔を見られなくて良かった。


水で顔を洗う。これで少しはマシだろう。


だけどあんなに泣いたのに頭はスッキリしている。


初めてあのときのことを人に話せたからだろうか。


先輩に話して、優しく取り込んでもらって、


少しは過去の嫌な記憶を書き換えることが出来た気がする。


鏡の前の自分がよく見ればいつもと目は違うけど、目立たないことを確認して私は教室に戻った。


先輩はまだ戻って来ていない。


どこに行ったんだろう。