この件で絶対に泣きたくなかったのに。
止めようと思えば思うほど溢れ出て、静かな教室に私のしゃくりあげて泣く音だけが響く。
先輩はその胸に私を抱き寄せた。
この間、事故で抱きしめたときでさえあんなにオロオロしていたのに。
さりげなくこんなこと出来るなんて聞いてない。
先輩の胸の中で私は長い間泣いた。
もう何が悲しくて涙が出ているかなんて分からない。
それでも微かに伝わる心臓の鼓動が私に温かみを与えた。
ようやく涙が止まったときには、多分身体中の水分が絞り出されていたと思う。
「すみません…取り乱しちゃって」
「落ち着いた?ちょっと待っててね」
頭を一撫でした先輩は、そう言って急いで教室を出て行く。



