今でも覚えている。
あの日は残暑が厳しくて、二人でアイスをかじりながら帰った。
宿題を一緒に片付けるために入った私の部屋で、休憩のときにそういう雰囲気になってしまったんだ。
顔を近付けてくる和樹が、やけにスローモーションに見えた。
「私は…やっぱりそこでも拒否してしまったんです。そしたら…っ」
ここまで来ると私だってどうして和樹とキス出来ないのか理解出来ない。
好きなのに、ここまで待ってくれた和樹はきっと誰よりも優しくて、信頼だってしていた。
それなのに気付けば和樹の胸を手で押し返していた。
離れた顔とバッチリ合った目から、和樹が怒りに染まるのを見た。



