デビューの10日前くらいまでは付き合っていた私たち。
別に恋愛禁止、とかではなくて単に。
……なんかフラれた。


『好きじゃなくなったわけじゃないけど、少し考えさせてほしい』


って言われて、なんだそれ、って思ったけど、それを受け入れてしまうくらい、私は瀬那に嫌われたくないらしい。


「夜ちょっと時間いい?次の曲のことで相談」
「んー。9時半とかでいい?11時には寝たいけど」
「1時間あったらいいよ。明後日には琉星にデータ送っちゃいたいから」
「おっけ。明日学校にパソコン持ってきてくれたら休み時間も手伝うけど」
「あー、うん。昼休みは音楽室占拠するスタンバイしてあるから持っていく」


そんな感じで軽く話したあと、私はじゃあね、と電話を切った。
いつも通り、瀬那はうん、と言ってそれだけ。


こんなそっけないやつの何が好きなんだってね。
全部だよ、ばーか。