ガタリ、と電車が揺れる。
ゆらっと体勢が傾くけど、体幹強すぎて、スニーカーだと普通に耐えれてしまう。
少女漫画みたいなシチュエーションにはならない。


電車が弾んだ衝撃で瀬那の手は離れたけど。


会話が途切れる。
家に着く1駅前まで、向かい合ったまま別に何を喋るわけでもなく、ただそこに立つだけの時間。
チラッと一瞬、目が合う。


「今日のさ」
「ん?」
「快斗のあれ」


あれ?……あれとは。
じっと瀬那のことを見ていると、さっきみたいな怖い顔。ほっぺた触ってたときの、怖い顔。
カラオケ入ってきたときの、あれの話らしい。


「うん、何?」
「普通にムリ」


じーっと見つめられる。
どうやら、ヤキモチ妬いた話をしているらしい。
……彼氏じゃねーだろってな。口悪いな私。


「私に言われても、したの快斗でしょ」
「……それ言われたら何も言えない」
「と言うか、フッといてずるいよ」