「あっ、さくらちゃん」


事務所を出ようとしたところでさくらちゃんが誰かと電話をしていた。


「いや、明日は無理なんだって。今日なら大丈夫だけど……うん、無理……ごめんね?」


すごく、すごく私的なお電話な気がする。
それも、琉星が聞いたらすごく喜ぶような。


さくらちゃんは、ふっと私たちの存在に気づいたのか慌てて電話を切って私たちのところに小走りでやってくる。


「どしたの?用事?」
「明日の衣装取りに来たんです」
「そうなんだ、送って行こうか私」


さくらちゃんは嬉しそうにポケットを漁ると車のキーを取り出す。


「いや、いいで」
「お願いしていいですか?」


遮ったのは瀬那。
ちょっとぐらい寝ろ、と囁かれた。


優しさのつもり、らしい。


さくらちゃんの好意もあってお家までの20分。
まぁ寝付くまでに時間があったから15分くらいかな、寝かせてもらって。