暗がりの中、目が泳ぐのだけはよくわかる。


「……何?」
「いや……その、」


歯切れが悪い。
なんだかちょっと鬱陶しくも思う。


言いたいことがあるならとっとと言えばいいのに。
何がそんなに言いにくい?


「こらこら、瑠南。あんまり急かさないの。
瀬那も前に戻りたいって言いたいだけなんだから」
「あっこら、変なこと言うなよ」
「間違ってないでしょ?」
「……そう、だけど」


なすちゃんは前を向いたまま、んふふ、と笑う。


前……とは?


「何?前って」
「は?お前頭悪いかよ」
「なっ、頭悪いって何?」
「頭悪いだろ。普通気づくって。
なんなん?お前俺に気ぃねぇの?」
「なんで今そんな話になるの?」


ふふっと、嬉しそうに笑っている運転席のなすちゃん。バックミラーで私たちを見ているらしい。
若いねぇなんて呟いてるけど、この人もまだ24歳だ。普通に若い。