しかも、タチが悪いことにこいつらは俺が音楽活動したいことを知ってる。
それで断ってるんだから脈ないのはわかってるだろうに。
あー……よく心折れないわ。


予想した通り、目の前に1人の女の子が立ちはだかる。


予想通りだった。ある一点を除いては。
傘もささずに髪を濡らして、制服を濡らして、俺の前に女の子が立ちはだかったことを、除いて。


「に、二宮くんっ、ちょっ……歩くの早くない?」
「そりゃ早いでしょ、めんどくさいも……ん」
「そんなこと言わないで。私たちには二宮くんが必要なの。絶対後悔させないから、だから」


深々と頭を下げて、髪から水を滴り落とす。
長い髪が、濡れて。
今朝は綺麗に内巻きになっていたのに、今の毛先はあっちこっち向いている。


……言った、方がいいん、だよな?
とりあえず、傘。


俺は瑠南に傘を傾ける。
背中に傘から落ちた水滴が冷たい。


「……透けてる、ピンクの」
「へ?」