「案外、似合ってんな」
「瀬那が似合うと思って選んだんじゃないの?」


明るい茶色の丸メガネ。ちょっと大きめなのは作業がしやすいように視界を広くするため。
瀬那の優しさ。……を未だに引きずる面倒な女。


「まぁそうだけど。瑠南に似合いそうだなって思って選んだよ、そりゃ」


つんっとメガネのフレームを突かれる。
……たらしだよな、ほんと。
困る……。


すると、急に真面目な顔をして私の顔を見つめた瀬那が、私の頬に触れた。


「……瀬那、?」


触れられた頬に意識が集中する。
熱を持って、明らかに彼を意識しているのが、よくわかる。


「瑠南〜。ごめん、振り付けの話したいんだけど」


琉星の、明るい声。
ふっと離れる瀬那の手。


……なに、今の?


「あっ、はーい。今行くっ」


私は瀬那を置いて部屋を出た。
ドアを閉めるときにちらりと見えた瀬那の顔はなんだか、後悔とか、そういう顔だった。