深優は大きなあくびをすると歯ブラシを持って目をシパシパさせながら歯を磨いていた。
俺もその隣で身支度を始める。


「瑠南朝からどこ行ってたの?」
「走りに行ってたぽいけど」
「あーね。瑠南が走りに行くときは瀬那ちんも起きるもんだと思ってた」


歯磨きしながらモゴモゴとそういう深優。


「深優、まだー?」
「まだー」


洗面所に顔を出したのは快斗。
今日も快斗と深優は仕事一緒のはずだから、多分快斗が深優の準備待ちかなんかだろう。


快斗は深優に近づいて後ろからギュッと腕を回す。
……いちゃつきやがって、付き合ってもないのに。


「深優、俺のメイクもして?」
「んー。いーよ」


俺は2人の空気を壊さないようにさっさと洗面所を出た。
リビングのテーブルに並べられた豪勢な朝ごはんを少し急いで食べるとレッスンルームの奥、レコーディングルームに篭った。


1人で声出ししながら楽譜の確認して、ラップを頭に叩き込む。