心の中でそうつぶやいたそのとき。


やわらかな笑みを浮かべた洋季さんが、こんなことを口にした。


「愛海ちゃん、これからも、婚約者候補としてよろしくね」


「えっ……?」


婚約者候補?


えっ……だ、誰の婚約者候補……?


頭上にたくさんの疑問符を浮かべるが、洋季さんは、そんな私をスルーして立ちあがる。


「……じゃあ、そろそろ帰るか。


父さんに伝えにいってくるね」


洋季さんが、藤堂さんのところへ向かうために姿を消したあと、私は考えていた。


さっきの洋季さんの言葉についてだ。


『婚約者候補としてよろしくね』


……“婚約者候補”って、いったい誰の婚約者候補を指してるんだろう。


私の婚約者候補?


洋季さんの婚約者候補?