「転校初日に告白されて自分からキスなんて、俺には考えらんねぇ」


そう言われればあたしだってそうだ。


転校の経験もないからわからないけれど、環境が変わるとのは結構大変なことではないのか。


そんな中、行きなり告白されてキスなんて、あたしにもできるとは思えなかった。


「出会った瞬間に運命を感じるってことはあるみたいだよ?」


あたしはどこかの芸能人が言っていた言葉を思い出して呟く。


大西さんもきっとそうなのだろう。


男子生徒と出会った瞬間この人だと感じて、そのまま行動に移してしまった。


いずれにしても、あれだけの美人だからできる技だった。


あたしは1年生の頃から柊真のことが好きだと言うのに、未だにグズグズしている。


そうこうしている間に、もう家の前に来てしまった。


「なんかごめんな。パフェの予定だったのに」


玄関前で立ちどまり、柊真が申し訳なさそうに頭をかく。


「ううん。パフェはまた今度二人で行こうね?」


そう言ってから、自然とデートの誘いをしてしまったことに気が付いて、頬が熱くなるのを感じた。


「もちろん。じゃあ、また明日な」


そう言って手を振り歩いて行く柊真の後ろ姿を、あたしは見えなくなるまで見送ったのだった。