「ちょっと心美、なにしてるの!?」


母親の悲鳴が聞こえたのは夕食時だった。


あたしは今まさにご飯を食べようと口を開いたところだった。


「え?」


首を傾げて母親を見る。


母親の顔はひどく青ざめていて、あたしの手から箸を奪い取ってしまった。


「どうしたのお母さん?」


驚いて聞き返す。


「どうしたのって……なにを食べようとしてるの!?」


その言葉にあたしは自分の茶碗を見下ろした。


茶碗の中には大量のチョコレートが入れられている。


チョコレートに混ざり、死んだ蟻やチョウチョも入っている。


前に大西さんが死んだ虫を栄養にすればいいと言ったことを、今でもしっかり守っているのだ。


死んでもなお生き続ける。


それは虫にとっても幸せなことだと考えたからだ。