「……ねぇ。大地から見て、伊月ってどんなひと?」
懐いているのは見ていればわかるけれど、実際はどんな風に思っているんだろう。
なんとなく大地からの評価が知りたくて聞くと、「まぁ、普通」と返された。
「ばあちゃんを大事にしてくれるから悪いヤツじゃないのは確かだな。仕事の合間ぬってちょこちょこ様子見に来てくれるから助かってる。俺、部活で帰り遅いから。姉ちゃんが帰ってきてても女ふたりで心配だし」
真面目に心配してくれているのがわかる横顔を見て、本当に優しい子だなと思う。
高校生なんだから、もっと自分のことばっかりでもいいのに……部活中でさえ、家のことを考えてくれているのか。
「そんなに心配かけてるなら、私も空手でも習っておけばよかったね」
私が有段者なら少しは安心するのかなと思い言うと、大地は「じゃあ俺が教えてやろっか」と笑うから、苦笑いを返した。
「ずっとクリンチしててもいいなら。殴り合いじゃ勝てないけど、相撲ならまだ負けない気がする」
「その自信どこからくんの。無理だよ、秒殺」
ハハッと笑った大地に、果たして本当にそうだろうか……と真剣に考えていると。
「伊月さん、いいと思うけど」
突然そんなことを言われる。
キッチンから食器を洗うカチャカチャとする音が聞こえる中、隣を見ると、大地は私を見て微笑む。
「割といい男だしいいひとだから」
あまりに唐突に感じ、ポカンとしてから首を傾げる。