「つぐみが夢中になって作っちゃったみたいなのよ。なにか悩み事でもあるのかしらねぇ」

なめこのお味噌汁をちゃぶ台に並べている私をチラッと見るおばあちゃんに、「なんで?」と眉を寄せると、ふふっとその背中が揺れる。

「つぐみは昔から、なにか悩み事があると家事に夢中になるところがあるから。……あら。気付いてなかったの?」
「えー……だって、別にそんなんじゃないし。ただ、なんとなくってだけだよ」

「ただなんとなくでこの量作るって、そっちの方がやばくない?」と苦笑いを浮かべた大地が座り、「いただきまーす」と手を合わせる。

おばあちゃんと私も続いて手を合わせたところで、ガラッと玄関が開いた音がして、大地を見た。

「今、玄関開いた音したよね? 大地、鍵、かけなかったの?」
「うん。だって、すぐ来るから開けとけって言われたし。……あ、これうまい。ばあちゃん、今日、ご飯おかわりできる?」

めかじきの煮つけを食べながら聞く大地に、おばあちゃんは「できるよ。つぐみが四合も炊いちゃったからねぇ」と笑っているけれど……玄関先にいるであろう誰かはどうでもいいのかと不安になる。

なんでこのふたりはこんなに落ち着いて食事を続けてるんだろう。

「大地、すぐ来るからって誰に言われたの? っていうか、今、明らかに誰かが勝手に入ってきたのにそんな呑気に食べてる場合じゃないでしょ!」

なんで私しか焦ってないの……? おかしくない?
そんな心持で訴える私を見て、大地は眉を寄せた。もちろん、箸は止まってない。