極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



「あの人、二年間も私を騙してたんだよ。私にもニコニコ笑いながら平気で嘘ついて……。なのに、責めることもできない。最低な男だったっていうのに、一度でも好きになった人に傷つくような言葉はかけたくない。もうどうでもいい人のはずなのに割り切れなくて……今でも嫌われるのが、怖い」

誰になんと言われようと本心だった。
傍から見たら、人がいいだとか呆れられるのかもしれない。でもそういうことじゃなくて……ただただ怖いと思ってしまうのだから仕方ない。

「二年間の裏切りを責め立てたら、きっと光川さんは私に面倒くさそうな顔を向ける。その時に感じる恐怖に、私は耐えられない。光川さんが悪いのに、なんて反論できない。どうしようってパニックになるし、機嫌をとらなくちゃって……無意識に、でも強烈に思っちゃうんだよ」

母親が私をなんとも思っていないんだと、邪魔にしか思っていないんだと気付いてしまった瞬間に重なるせいかもしれない。

不機嫌な顔をされると、自分の存在を拒否されているんだと怖くなる。
相手うんぬんの問題じゃなく、自分の問題だった。

「知らずに浮気相手になってた自分も嫌なの。いつだって、正しいって胸を張れることしかしたくないのに、浮気なんて……なのに、光川さんを責めることもできなくて……雁字搦め」