極上御曹司は失恋OLを新妻に所望する



どういう意味なんだろうと、隣を見上げると、伊月は嬉しそうな微笑みを浮かべてグラスを傾けていた。
念願の対面って、伊月がずっと会いたかった誰かと会えたってことなんだろうか。

今のニュアンスだとそういうことだよなぁと、アルコールでぼんやりした頭で考えていると、そのうちに、後ろに座っていた男性客の苦笑が聞こえてきた。

お店の雰囲気に似つかわしくないドッとした笑い声に、なにかと思って振り向くと、男性客の視線は、マジックミラーの外に向けられていた。
私もそれを追って……さっきの笑いの意味に気付く。

マジックミラーの向こう側の道路で、酔っぱらったビジネスマンが植木に倒れ込み、それを同僚らしき人たちが助けているところだった。

時計を見ると、まだ十九時前。
早上がりだったとか、なにかお祝いごとだとかそんなところだろうか。

植木に突っ込んだ人も、それを助けている人たちも、見る限りは普通のビジネスマンのようだった。
傍から見れば結構な醜態でも、本人たちはアルコールも入っているせいか、とても楽しそうだ。

ケタケタと笑っている様子を眺め……気付けばふっと笑みがこぼれていた。

「どうかしたか?」

伊月に聞かれる。