あまりに当たり前に告げられた〝好き〟の言葉に、一瞬、時間が止まった気がした。
え、今、伊月、私のこと好きって言ったよね……?と頭の中で考えて声を失って……でも、私が意味深に捉えすぎたんだとすぐに理解する。
だって、好きだって言った伊月本人はあまりに普通にしているし、きっと深い意味はなかったんだろう。好きって言っても、ラブじゃない。ライクだ、ライク。
そう思い、「どうも」とだけ返してからグラスに手を伸ばす。
水を飲みながらチラッと店内を見渡すと、十六時っていう中途半端な時間帯にも関わらず、二十ほどある席の半分ほどが埋まっていた。
どこのテーブルでも、上品な雰囲気の方が食事を楽しんでいて、自然と背筋が伸びてしまう。
今の時間にこうして食事している人たちって、ランチなんだろうか。それともディナーなんだろうか……とどうでもいいことを考えていて、ハッとする。
「ねぇ、今更だけど、伊月、お腹空いてた?」
私はお昼を抜いたから鳴るくらいに空腹だったけれど、伊月はどうだったんだろうと心配になった。
私に合わせてくれたせいでこんな中途半端な時間にご飯を食べることになったのなら申し訳ない、と思い聞くと、伊月は「気にしないでいい。俺も空いてたから」と答えた。



