伊月は御曹司らしいし、それにネクタイ姿のままだし……私も、それなりにフォーマルな格好の方が無難だろうと選んだのは、白いシャツとネイビーの膝丈スカートだ。

スカートのウエスト部分には同じ生地のベルトが巻かれていて、正面でリボン結びができるようになっている。
可愛いデザインで、気に入っている。

全部の準備合わせて二十分という時間内でしたメイクはそこまで念入りではないけれど、見られないほどひどくはないと思う。
髪は左耳の下の位置でひとつに束ね、結び目には、ヌーディ―ピンクのボリュームのあるシュシュをつけた。

持っているショルダーバッグは、薄いグレーの小さめのもので、足元は三センチヒールのパンプス。
身に着けているものはどれも決して高くはないものだけど、あまりに安値に見えるだとか悪目立ちするものではない……はずだ。

……はずだけど。

「ねぇ。私の格好、おかしくはないよね?」

伊月に、思わずそう確認したくなるくらいに、入ったレストランは高級感に溢れていた。
しかも、入店した伊月を見るなり、店員さんが他のフロアよりも数十センチほど高くなっている奥の席に案内するものだから、他のお客さんの視線が集まっているようで余計に緊張してしまう。