「んなわけないだろ。ふざけんな」
「だよね。よかった。まぁ、私も姉バカの自覚はあるから、あまり偉そうなことは言えないけど」
はは、と笑って大地の頭を撫でまわすと、それをうっとうしげに払われる。
私と一緒で生まれつき栗色の髪は、サラサラとしていた。
大地は高校からボクシング部に入り、今やホープだ。栗色の髪は地毛だけど、私自身、高校の頃、髪色を先生に注意された覚えがある。
それだけに、部活の先輩とかになにか言われたりしないかと心配していたのだけど、杞憂だったらしい。
最初に説明したら『へぇ、カッコいいな!』で終わったという話だ。大地がいい先輩に恵まれてよかった。
「おまえら姉弟って仲いいんだな」
それまで、頬杖をついて傍観していた伊月が感心したように言った。
「あれ。なんだ、伊月さん、来てたんすか」
今気付いたように言った大地に、伊月は呆れた笑みをこぼす。
「姉ちゃんに夢中で俺が目に入ってないとか、おまえ、やっぱシスコンじゃねーか」
「違うって言ってんだろ」
大地が気に入らなそうに即答すると、伊月は「敬語どこいったんだよ」と苦笑いを浮かべた。



