「だから余計に帰りたいの。大地の教育上よくない。それに伊月も言ったでしょ。大地のことも大事にするって」

あの約束を忘れたとは言わせないとばかりに持ち出すと、伊月は真顔ですぐに返した。

「するよ。おまえごと全部背負う気だし……なんかもうすでに家族みたいに思ってるから今更だけどな。俺がおまえとか、ふじえや大地とか、家になにするのにも大義名分ができた分、遠慮されなくなって気分がいいくらいだ。……でも」

伊月が体勢を変えたせいで、マットレスの沈み方が変わる。いいベッドだからかギシリとも音がしなくてそんなところに感心していると、私を押し倒した体勢になった伊月がニヤリと口の端を上げた。

「大地ももう高校生だろ。そろそろ姉離れするのがあいつの今後のためだ」

瞳にこもる妖しい色に胸が跳ねる。
薄暗いなかで光る眼に囚われてキスされてしまえば、もう帰りたいなんて言葉は出てこなかった。