「私のこと、信用してないんだ」
『してる。けど、それとこれとは別だろ。大事なもん手に入れるためには慎重になる必要がある』

最後に『だから、自分でもどうかと思うくらい確実な手段を選んでる』と言った声にはわずかに笑みが含まれていた。

自嘲するような伊月の顔が浮かぶようで、告げられた言葉の意味もあり、なにも言えなくなってしまった。そんな言い方はずるい。

そのあと、間もなくして到着した豪華すぎるお弁当。
木製のお弁当箱は二段で、それぞれが九分割されていて、そこに色々な料理が綺麗に収まっているものだった。

お肉料理からお魚料理、そして旬の野菜まで。色とりどりのそれは目にも美しく、お行儀が悪いけれどどれから食べようかと迷ってしまうほどだった。

ご飯もお赤飯やら栗の炊き込みご飯やらと、種類が豊富で食べていて飽きない。
こんな明るい時間帯に、こんな高級感溢れるお昼を食べるなんて初めてでわずかな優越感を覚えた。

小学校の頃、発熱で学校を休んだときに似ている。まだおばあちゃんが仕事をしていたから、家にはひとりで、でも、冷蔵庫にはおばあちゃんが作っておいてくれたおかゆとたくさんの果物が入っていた。

ひとりでそれらを食べているとき感じた気持ちを思い出しながら食べ終え、ひとつ息をつく。

こんな、実家とは似ても似つかない部屋で思い出すのは実家のことなんだから不思議だなと思うと、自然と笑みがこぼれていた。