東側の壁には大きな液晶テレビが取り付けられていて、そこから三メートルほど離れた場所に四人は横並びに座れそうな黒の布張りソファが置かれていた。

そして、そのソファの更に後ろ、五メートルほどのところにはサイズがダブル以上のベッドがある。
枠組みがレザーで、そこにマットレスがはまっているようなデザインは、高いであろうことが見ただけでわかるような代物だ。

目に見えてある場所に置いてあるものは少ないけれど、すべてが高そうで迂闊に触れない。こんな部屋にひとり取り残されていったいどうしろって言うんだろう……と呆然としていると、携帯が鳴る。

確認すると、未登録の番号だったけれど見覚えはあった。今朝、新幹線のなかで名刺を見ながら打ち込んだ番号だ。

「はい」
『俺。適当に昼飯頼んでおいたから、あと三十分もしないうちに届く。とりあえずそれ食って待ってろ。他も、部屋にあるものは好きにしてくれていいから。冷蔵庫にあるものも好きに飲んでくれていい』

聞きなれた伊月の声に少しホッとしながら、部屋を見渡して口を開く。

「うん。ねぇ、スペアキーとかないの? こんな高そうな部屋に放置されても落ち着かなくて困る。一回帰って、伊月の仕事が終わるころにまた来るんじゃダメなの?」

『ダメ。それだと俺が仕事にならない』
「なんで……」
『逃げた前科があること忘れるなよ。俺はまだそのへん完全には信頼してない』

ハッキリと言われ、口を突き出す。